背景
依頼者は、被相続人である親の遺言により、親のすべての財産を相続していました。ところが、兄弟が頼んだ弁護士から、親の遺言は無効であるから、法定相続分にしたがって遺産分割をするよう求める通知が届きました。
依頼者は、兄弟の代理人である弁護士から通知が届き、自分も弁護士を依頼した方がよいと考え、当事務所に相談に来られました。
兄弟は、遺言の形式面の不備による無効を主張していました。そこで、これに対する反論をして遺言の有効性を主張するとともに、仮に、遺言が形式不備により無効であるとしても、親が生前に同遺言について依頼者に遺言書を見せて説明をし、依頼者も親の死後全財産を取得することに応じていたことから、その時点において親子間で死因贈与契約が成立しており、同遺言書はその証拠になるものであると主張し、遺留分相当の代償金であれば支払う意思がある旨の提案をしました。
当方の提案に対し、先方から、提案通りの示談に応じる旨の返答があったため、遺言の有効性を確認し、遺留分相当額の代償金を支払うという内容で書面を作成し、示談が成立しました。
弁護士からの一言
本件は、弁護士が介入しなければ、死因贈与契約が存在する可能性を相手方に指摘することはなかったと思われます。依頼者が遺言の有効性のみを問題にしていれば、遺言の形式的な不備を問題視する相手方も譲ることなく、訴訟に発展する可能性のある事案でした。しかし、交渉の段階で、遺言が無効であるとしても、遺言書が死因贈与契約の証拠になることから、遺言の有効無効に関わらず結論は変わらない旨を主張することで、相手方を説得することができ、裁判に進むことなく、早期に解決することができました。